今回は市販でも購入可能な整腸剤であるビオスリーについてお話しします。
ビオスリーには、病院で処方される医療用医薬品の「ビオスリー配合錠」、「ビオスリー配合OD錠」、「ビオスリー配合散」と、
市販で購入することができる「ビオスリーHi錠」、「ビオスリーH(散タイプ)」などがあります。
ビオスリーとは
ビオ(Bio)スリー(three)という名前の通り、3種類の活性菌が配合された整腸剤です。
その3種類の活性菌とは酪酸菌、ラクトミン(乳酸菌)そして糖化菌と呼ばれるもので、それぞれ働きや住む場所が異なり、お互い助け合って効果を発揮します。
腸内環境を整えることで、便秘、下痢・軟便、お腹の張り(腹部膨満感)などを改善します。
酪酸菌について
酪酸菌とは腸内で食物繊維を分解して酪酸を産生する細菌の総称です。
酪酸菌は酸素のある環境では生存できない偏性嫌気性菌に分類され、大腸に住みついています。
病院で処方されるミヤBMや、市販で購入できるミヤリサンはこの酪酸菌の一種である宮入菌を含有する整腸剤です。
酪酸菌は酪酸と酢酸を産生する
酪酸菌は酪酸と酢酸を産生することで悪玉菌の増殖を抑えて、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌の住みやすい環境を作ります。
酸を産生し腸内が弱酸性になることでカルシウムなどのミネラルの吸収がよくなり、ミネラル不足を補うことができるともいわれています。
酪酸菌は抗生物質に耐性がある
酪酸菌は芽胞(菌を覆うバリアのようなもの)を形成するので、熱や酸、抗生物質に耐性があります。
ラクトミン(乳酸菌)について
ラクトミンは乳酸菌の一種で、乳酸菌は乳酸を産生する菌の総称です。
乳酸菌は酸素が存在する環境でも生育できる通性嫌気性菌に分類され、小腸下部から大腸にかけて生育しています。
乳酸菌は主に乳酸を産生します。
乳酸菌は主に乳酸を産生し、腸内を弱酸性にすることで、悪玉菌の増殖を抑え、酪酸菌などの善玉菌を増やします。
糖化菌について
糖化菌とは糖化作用をもつ細菌群のことで、納豆に含まれる納豆菌もこの糖化菌の一種です。
糖化菌は酸素がないと生育できない偏性好気性性菌に分類され、小腸上部に分布します。
糖化菌は糖を作り出す
糖化菌は腸内でアミラーゼを産生し、デンプンを分解して糖を作り出します。
この糖が腸内でビフィズス菌や乳酸菌の栄養となって増殖を助けます。
糖化菌は芽胞を形成する
糖化菌も酪酸菌と同様に芽胞を形成するので、熱や胃酸に強く、生きたまま腸に届きます。
複数の菌を同時に摂取することで相乗効果が期待できる
ビオスリーに含まれる3種の菌はお互い相性が良く、以下の理由から同時に摂取することで相乗効果が期待できます。
3種類の活性菌は住み着く場所が異なる
ビオスリーに含まれる「酪酸菌」「ラクトミン(乳酸菌)」「糖化菌」はそれぞれ酸素への感受性が異なります。
つまり酸素があると生育できない酪酸菌は大腸で、酸素があっても平気な乳酸菌は小腸下部から大腸で、酸素が必要な糖化菌は小腸上部で、それぞれ増殖します。
こういったことから3種の活性菌を同時に摂取することが、小腸上部から大腸まで腸内全体に良い影響を与えることになります。
糖化菌は乳酸菌の増殖を促し、乳酸菌は酪酸菌の増殖を促す
ビオスリーに含まれる3種類の活性菌は、それぞれ単体で摂取するよりも、同時に摂取することでより菌数が増加します。
ある研究では以下のように報告されており、共生作用が認められています。
- 糖化菌と乳酸菌の混合培養では,乳酸菌の単独培養に比べ,菌数は12.5倍に増加する。
- 乳酸菌と酪酸菌の混合培養では,酪酸菌の単独培養に比べ,菌数は11.7倍に増加する。
ビオスリーの効果
ビオスリーの効果は便秘、下痢・軟便、腹部膨満感などの改善だけでなく、腸内フローラを整えることで免疫力を高めたり、アレルギーを抑える作用も期待できます。
便秘、下痢・軟便を改善
腸の動きが悪いと大腸での水分の吸収がうまくいかず、便の硬さに異常がでて、慢性的な便秘や下痢・軟便の原因になります。
ビオスリーに含まれる酪酸菌や乳酸菌が産生する短鎖脂肪酸は、この腸の動き(ぜん動運動)を良くすることで、慢性的な便秘、下痢・軟便を解消します。
また、腸を刺激して排便を促す便秘薬とは違い、ビオスリーなどの整腸剤は腸内環境を整えることで自然な排便を促すので、便秘を根本から改善することが期待できます。
便やおならの匂いを改善
ビオスリーなどの整腸剤によって腸内フローラを整えることは便やおならのニオイの改善に繋がります。
というのも腸内細菌のバランスが崩れるとウェルシュ菌などの悪玉菌が増加します。
この悪玉菌が産生するアンモニアや硫化水素、インドールなどの腐敗物質が不快なニオイの原因です。
さらにお肉中心の食生活は、悪玉菌の増殖が活発になり便やおならのニオイも臭くなります。
免疫力を高める作用
腸内細菌のバランスを整えることは免疫力の向上に繋がります。
というのも腸内には免疫反応に重要な細胞や抗体が豊富あり、免疫細胞の約70%が腸に存在しています。
この腸管免疫を活性化することが全身の免疫反応の調節にも大切です。
アレルギーを抑える作用
腸内細菌叢の異常とアレルギー発症には深い関わりがあります。
ビオスリーに含まれる酪酸菌が産生する酪酸には、免疫が過剰に反応しないように制御する細胞を誘導する作用があり、炎症やアレルギーを抑制するとされています。
ビオスリーで痩せるといわれる理由
ビオスリーに含まれる活性菌が産生する短鎖脂肪酸である酪酸と酢酸には、肥満を抑制する作用が報告されています。
一般に食べても太らないという人は、この短鎖脂肪酸を産生する菌が多いとされ、実際にヒトにおいても肥満体型の人と正常体重の人では、腸内細菌の構成が異なることが発見されています。
どれくらい飲み続けると効果が出るの?
どれくらいの期間で効果が出るのかは、個人差があるため一概には言えませんが、
服用後してすぐに効果を実感できる方もいれば、1週間程度で実感される方もいます。
1ヶ月程度服用しても症状の改善がない場合は、一度病院に受診して検査を受けるようにしましょう。
ビオスリーとビオフェルミンの違い
有名な整腸剤といえばビオフェルミンがあります。
ビオスリーとビオフェルミンの違いは含まれる活性菌の種類です。
それぞれ効能については大きな違いはありませんが、ビオスリーには芽胞を形成する菌が含まれているので抗生物質と併用することもあります。
ビオスリーは剤形が違っても成分は同じですが、ビオフェルミンは錠剤タイプと粉タイプで成分が異なります。
整腸剤 | 酪酸菌 | ラクトミン(乳酸菌) | 糖化菌 | ビフィズス菌 |
---|---|---|---|---|
ビオスリー | ◯ | ◯ | ◯ | |
ビオフェルミン錠 | ◯ | |||
ビオフェルミン配合散 | ◯ | ◯ |
ビオスリーにはビフィズス菌は含まれていませんが、ビオスリーに含まれる糖化菌がビフィズス菌の増殖をサポートします。
ビオスリーの副作用
ビオスリーは善玉菌を主成分とする整腸剤なので目立った副作用はありません。
というのも酪酸菌、乳酸菌は元々大腸に存在する善玉菌であり、糖化菌は納豆などの食べ物にも含まれる菌です。
このように自然界に存在する菌を摂取することになるので大きな副作用はなく、安全に腸の調子を整えます。
ビオスリーは毎日飲んでも大丈夫なの?
ビオスリーは毎日服用しても問題ありません。
長期間服用することで効かなくなったり、くせになるようなこともありません。
口から摂取した善玉菌は、永遠に腸で生きるのではなく、時間とともに死滅していきます。
なので一度に大量に摂取するのではなく、習慣的に摂取することが大切です。
市販のビオスリーはどこで買えるの?
市販で購入できるビオスリーは、中村アンさんのCMでお馴染みの「ビオスリーHi錠」があります。(粉タイプ:ビオスリーH)
ビオスリーHi錠/Hは指定医薬部外品に分類されるので薬局、ドラックストアだけでなくスーパーやコンビニ、ネット通販でも購入することは可能です。
ですが、店舗に行っても売っていなかったということもあるので、事前にお店に在庫を確認するか、Amazonなどのインターネット通販での購入がオススメです。
ビオスリーHi錠
ビオスリ-Hi錠はアリナミン製薬から発売されており、やや甘みのある飲みやすい小粒の錠剤です。
3種類の活性菌が配合され、整腸(便通を整える)、便秘、軟便、腹部膨満感を改善します。
ビオスリーHi錠の用法用量
年齢 | 1回量 | 1日服用回数 |
成人(15歳以上) | 2錠 | 3回 |
5歳以上 15歳未満 | 1錠 | 3回 |
5歳未満 | 服用しないこと |
錠剤が苦手な方はビオスリーH
ビオスリーHi錠は5歳未満は服用できませんが、ビオスリーHは粉タイプなので生後3ヶ月から服用することが可能です。
ビオスリーHの用法用量
年齢 | 1回量 | 1日服用回数 |
---|---|---|
成人(15歳以上) | 1包 | 3回 |
3ヶ月以上 15歳未満 | 1/2包 | 3回 |
3ヶ月未満 | 服用しないこと |
市販のビオスリーの成分について
市販のビオスリーは、医療用ビオスリーと同様に「酪酸菌」「乳酸菌(ラクトミン)」「糖化菌」が配合された整腸剤です。
成分名 | 含量 |
---|---|
酪酸菌 | 150mg |
ラクトミン(乳酸菌) | 30mg |
糖化菌 | 150mg |
ビオスリーHi錠 6錠中/ビオスリーH 3包中の成分量(15歳以上の 1 日服用量)
まとめ
ビオスリーは「酪酸菌」「ラクトミン(乳酸菌)」「糖化菌」の3種類の活性菌が配合された整腸剤です。
便秘、下痢・軟便、腹部膨満感などの改善効果だけでなく、活性菌が産生する短鎖脂肪酸には肥満を抑制する作用も期待できます。
市販薬を使用する際は決められた用法用量を守り、1ヶ月程度服用しても気になる症状に改善がない場合は一度診察を受けましょう。
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参考資料
ビオスリー配合散/ビオスリー配合錠/ビオスリー配合OD錠 (pmda.go.jp)
おなかの不調、整腸、便秘、軟便には酪酸菌配合のビオスリー | アリナミン製薬 (bio-three.jp)