2023年3月に厚生労働省より「肥満症治療薬」としてウゴービ皮下注(セマグルチド)が正式に承認されました。
この記事では、30年ぶりの医療用肥満症治療薬である「ウゴービ」について解説します。
ウゴービの発売日について
ノボノルディスクファーマは2023年11月22日に薬価収載された肥満症治療薬「ウゴービ」について、翌年2月22日に発売予定としています。
先行して発売した米国では需要に供給が追い付かない状況となるなど、日本での発売後も処方が受けられない状況になる可能性もあります。
ウゴービ(一般名:セマグルチド)とは
ウゴービとは、セマグルチドを主成分としたGLP-1受容体作動薬に分類される医薬品です。
糖尿病治療薬のリベルサスやオゼンピックと同じ成分をもち、日本では「肥満治療薬」として初のGLP-1受容体作動薬です。
GLP-1とはホルモンの一種で、インスリンの分泌を促す作用や食欲を抑える作用、食べ物の胃からの排出を遅らせる作用などがあります。
ウゴービは、体内でこのGLP-1と似た働きをすることで体重減少を促進します。
ウゴービの適応症
ウゴービが適応となるのは、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限られます。
- BMIが27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
- BMIが35以上
ウゴービの適応症について詳しくは以下の記事で解説しています。
>>>ウゴービの処方が保険適用となる条件は?ダイエット目的での処方は可能?
ウゴービの使用方法
ウゴービは、週1回の皮下注射で投与します。
0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの容量が異なる5つの規格があり、0.25mgからスタートし4週毎に増量していきます。
オゼンピックの最大投与量が1.0mgであったのに対して、ウゴービは最大2.4mgの投与が可能となっています。
ウゴービの値段
ウゴービは2023年11月15日に薬価収載され、各容量の値段は以下の通りです。
規格 | 薬価/1キット |
0.25mg | 1,876円 |
0.5mg | 3,201円 |
1.0mg | 5,912円 |
1.7mg | 7,903円 |
2.4mg | 10,740円 |
ウゴービの効果について
ウゴービは、食欲を抑制し体重減少を促進することで、肥満に伴うさまざまな健康リスクを軽減します。
肥満症に効く理由
ウゴービは、脳の満腹中枢に作用し、食欲を抑えることで体重減少を促進します。
また、胃の排出を遅らせることで満腹感が長持ちし、無理なく食事量を減らすことが可能になります。
これらの作用により、食事療法や運動療法だけでは十分な効果が得られなかった肥満症患者にとって、ウゴービは重要な治療選択肢となることが期待されます。
どれくらい体重が減る?
日本人を含む東アジア人を対象とした臨床試験であるSTEP6試験において、68週間にわたってウゴービ2.4mgを使用した群では、体重が13.2%減少することが報告されています。
これは、例えば体重100kgの人が約13kg減量することを意味します。
また、ウゴービ2.4mg群の83%、1.7mg群の72%で、5%以上の体重減少を達成しています。(プラセボ群では21%で、5%以上の体重減少)
ウゴービ2.4mg群 | 13.2%の体重減少 |
ウゴービ1.7mg群 | 9.6%の体重減少 |
プラセボ群 | 2.1%の体重減少 |
ウゴービの副作用について
ウゴービの副作用としては、消化器症状(嘔気、下痢、便秘)が最も高頻度で現れます。
また、低血糖や急性膵炎のリスクがあるとされますが、これらは比較的珍しい副作用です。
ウゴービ使用時には、これらの副作用に注意し、気になる症状が現れた場合は医師に相談することが重要です。
消化器症状
ウゴービの最も一般的な副作用は消化器系に関連しています。
臨床試験においてもウゴービ2.4mg群で59%、1.7㎎群で64%、プラセボ群では30%で嘔気、下痢、便秘などの胃腸障害が報告されています。
これらの症状は通常、軽度から中等度のものであり、治療の初期に特に発生しやすいとされています。
ウゴービの投与量が増えるにつれて、これらの副作用の発生率も高まる傾向があります。
低血糖
ウゴービは低血糖を引き起こす可能性もありますが、この副作用は単独でウゴービを使用する場合には比較的まれです。
しかし、糖尿病治療薬と併用する場合、特にインスリンやスルホニル尿素薬との併用では、低血糖のリスクが高まります。
低血糖の症状には空腹感、発汗、震え、動悸、だるさなどがあります。
これらの症状が現れた場合はすぐに医師または薬剤師に相談しましょう。
膵炎
ウゴービ使用による重篤な副作用として、急性膵炎のリスクがあります。
これは比較的珍しい副作用ですが、他のGLP-1受容体作動薬でも急性膵炎の副作用が報告されています。
急性膵炎の症状には激しい腹痛、背中の痛み、吐き気、嘔吐などが含まれます。
これらの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診するようにしてください。
まとめ
肥満症治療薬ウゴービの発売日は、2024年2月22日の予定です。
これまで自費診療でしか治療が行えなかった肥満症の方が、将来多くの合併症を来たす肥満の治療が保険適用で可能になることになります。
また、ウゴービによる体重減少は、肥満による健康リスクの減少だけでなく、生活の質の向上にも寄与することが期待されています。
ウゴービは肥満症治療に有効な新たな選択肢となりますが、副作用に対する注意と適切な医療の指導が必要です。
使用前に医師と十分に話し合い、体調の変化に注意しながら使用するようにしましょう。
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参考資料